さ げ も ん

両親の里方、柳川ではひな祭りに「さげもん」と呼ばれる飾りを吊るすのが習慣です。
御殿まりをはじめ、さまざまな縁起物を大小2重の輪に吊るすので、吊り雛とも呼んでいました。
我が家でも娘の初節句に備えて、母が作ったものがあります。
一人では大変なので、私と従姉妹、母の友人方が協力してくださって無事初節句を迎えました。

お雛様とさげもん


「さげもん」は七つの縁起物を付けた紐を七本提げたものを二つで一対とします。
上部の輪は紅白の布を巻き紙花を飾りつけ、中心に大小の御殿まりなどを吊るします。
各家庭で提げるお細工物には、あまりきびしい決めごとはせず、
きれいなもの、かわいいものを奇数でまとめたいろいろな飾りがあります。
立派なひな壇の両側、座敷中にさがる旧家のようにはまいりませんけど、
我が家なりに華やかな雰囲気を楽しんでいます。



折り鶴のさげもん

(長さ約100cm)
ふれるたびに
鈴が良い音を
鳴らします。
折り鶴のさげもん
歳上の従姉妹が千代紙と鈴で作ってくれた飾り。
他に大小の這子(ほうこ)さん(這い這い人形)をたくさん作ってくれました。

さげもん一対
さげもん一対(長さ約120cm)
中心のまりの下のほうにはそれぞれオルゴールを忍ばせてあります。



中心の御殿まり
一番大きな御殿まりは亀甲に区切った中を様々に刺し埋めています。
御殿まり1 (直径18cm)
菊刺し・赤 オルゴールのまりはどちらも
菊刺しの色違いで。
引き紐
くくりさるのついた白い引き紐
を引くと曲が流れます。
赤い方が「ひな祭り」
水色が「月の砂漠」

鶴1

一部を除いて、御殿まりは草木染めの木綿糸で刺しています。
藍染めは久留米絣の紺屋さんで染めた物で、「かめのぞき」という淡い淡い水色が好きです。
生成り糸がちょっと藍甕を覗いたら染まってしまった、というのが名前の由来だそう。

私が子供の頃はリリヤンで巻いたのですが、本来は草木染めの絹糸や木綿糸だったようです。
御殿まりという呼び名は、立花藩の御殿女中衆が作っていたからだと聞きました。

親戚の家へ遊びに行くと、おばあさんから『納戸から古綿を持ってこんの(きなさい)』と言われ、
積んである綿を一掴みちぎって戻ると、抜き糸(しつけや洗い張りのキモノから抜いた糸)を渡されて
ぐるぐると地巻きをし、布団針とリリヤンでかんたんな花刺しなど習って作りました。

どこの家にも代々のさげもんが残っていて、型紙を大事に使い、手毬の巻き方を幾通りも知っているお年寄
りがいました。我が家ではもう母方の祖母も亡くなっていましたので、母が師事している先生から指導して
いただいたり、私のさげもんから型紙を取ったりしながら作りました。

昔から長女の初節句には雛とともにさげもんをずらりと飾って、お披露目をするしきたりでしたので、
ここは親族の女衆の腕の見せ所でもあったわけです。

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